クールな社長の耽溺ジェラシー
「正司さん……絶対がっかりしただろうな……」
隣に新野さんがいることも忘れて、晴れない気持ちがこぼれ出る。
「美術館以外に、あの人のなにがよかった?」
「そのあとの作品は全部、でしょうか。もちろん、その前の作品も好きですけど……ちょっとだけ雰囲気が違いました」
「美術館のあと、か……」
重々しく呟く新野さんを気に留めず、私はしゃべり続けた。
「それに正司さんの設計図を見るとわくわくするんです。この人のもとで働けてよかった、って何度も思いましたし、あの人が創りだすものをこれからもずっと見ていきたいんです。正司さんみたいに……私もなりたい」
「……それは困るな」
「えっ?」
新野さんは眉を寄せると、おもむろにソファから立ちあがった。廊下へ出ると、書斎から使い古したノートやよれよれになった図面の縮尺コピーを手に戻ってきた。
「見るか?」
「いいんですか!?」
部屋にあるライトや雑誌が気になっていたけれど、そのどれよりも一番の教科書になりそうだ。
マグカップと書類をダイニングのテーブルへ避けると、ローテーブルにお好きにどうぞとばかりに広げてくれる。
さらにパソコンも持って来てくれて、×マークが書かれたフォルダーの図面やCGを見せてくれた。
「期待するなよ、全部失敗作なんだから」
とはいえ、採用されなかっただけで新野さんが骨身を削って描いたものには変わりないはずだ。
「ありがとうございます!」
お礼を言うとその声が大きすぎたのか、新野さんは片眉だけ歪めて嬉しそうに笑ってくれた。