クールな社長の耽溺ジェラシー
「ここ、知ってる……」
画面を見つめたまま、声が漏れた。頭の中に、ある美術館が鮮明に描かれる。
忘れたくても忘れられない、私がこの道へ進むきっかけとなった美術館だ。
「ここ……この美術館……正司さんが照明を手がけたところ……」
「見間違いだ」
聞こえてきた声はくぐもっていた。
「見間違いじゃありません、タイトルだって……ほらっ」
見えたタイトルはまぎれもなくあの美術館だった。記憶に刻まれた情景と図面がさらにピタリと重なる。
右下にある照明の設計担当者の名前は、正司さんではなく新野さんだった。
「どういうことですか、これ……」
隣の新野さんを見ると、目をつぶって深いため息をついていた。その姿にまずいと思っていることが伝わってくる。
「俺が閂建設にいたころのものだ。けど、いま見せているのはボツになったやつばかりだって言っただろ」
「でも……っ」
「小夏、よく見ろ。完成した美術館はエントランスが吹き抜けになっていて、この照明は存在しない」
納得がいかない私に、上体を前のめりにして画面を指で差した。
新野さんの言う通り、頭の中にある美術館もそこは吹き抜けになっている。だけど、そんなことは関係ない。
「設計の変更くらいよくあることです」
「ここも。積算ミスしている」
ほかの場所を指差す新野さんに、軽く横に首を振った。
「いいえ、こんなの……これが元になって、いまの美術館ができていることくらい、私にもわかりますよ」
「どんな経過があって、これができたかわからないだろ」
「それはそうです、けど……」
完成した美術館と図面に記された照明の配置、設計は重なる部分が多すぎる。
だからあの建物の照明の担当者には新野さんの名前、もしくは正司さんと新野さんの名前が記されるのが自然だ。