クールな社長の耽溺ジェラシー
頭が混乱する。私を照明の道へ導いてくれた大好きな建物は新野さんの設計で、ずっと憧れてきた人は正司さんじゃなくて新野さんだったのだろうか。
「めまい、しそう……」
くらくらして額に手を当てた。うつむいていると、ソファから降りた新野さんが両肩を支えてくれて顔を覗きこんできた。
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃ、ない……」
声がひどく震え、今にも泣いてしまいそうだった。新野さんの手を振り払うと「悪い」と気まずそうに眉尻をさげた。
「見せる気はなかった。このデータは……とっくに削除したつもりだったんだ」
私に訴えかけてくる瞳はまっすぐで、だけどその奥は動揺を隠しきれずに揺らいでいる。
事実を受け入れられない頭でも、新野さんが本当のことを言っていることはわかった。
だからこそ、ますますどういう顔をしていいのかわからなくなる。
「悪かったよ」
もう一度謝られて、声もなく首だけ横に振った。
正司さんの過去をばらした新野さんに腹が立っているわけではない。正司さんが新野さんの設計を奪っていたことがショックでたまらなかった。
「……私、帰ります」
立ち上あがると、手首を新野さんに掴まれる。
「送る」
テレビから流れる音と混ざって、窓を打ちつける激しい雨音が聞こえた。
いっそのこと濡れて帰ったほうが、気が紛れて楽になるんじゃないかとさえ思えてくる。けれど。
「用意するから、座ってろ」
腕を引かれ、すとんとその場に腰を下ろすと、新野さんは立ちあがって廊下へ向かった。財布と車のキーを手にして戻って来ると、私の前にしゃがみ込んだ。