クールな社長の耽溺ジェラシー
「それじゃ、戻ろうか。帰りは僕が運転するよ」
「いえ、私が……」
「いいから」
笑顔で私から車のカギを受け取ると、荷物が入ったバッグを肩にかけた。私もまとめていた荷物を抱えあげ、少しだけあたりを見渡した。
まだテナントもベンチも、なにも入っていない施設はガランとしていて新築の匂いだけを漂わせている。
目を閉じて、少しだけ想像した。この商業施設が多くの人で賑わう様子を。
「高塔さん?」
「あっ! すみません、行きます!」
正司さんの声に目を開けると、慌てて駆けよった。
またひとつ、自分が関わった建物ができた。大袈裟かもしれないけど、生きた証を残したみたいで嬉しい。
車を停めていた駐車場へ出ると、心地いい風が吹いた。太陽は少し西に傾いていて、だんだんと早くなる夕刻のおとずれに秋の気配が感じられる。
それでもヘルメットを被り、冷房の効かない場所で長袖を着て作業をするのは暑くて、作業着は肌に張りついていた。
「そういえば広瀬くんに聞いたよ。昨日は新野くんとご飯行って、現場も見せてもらったんだって?」
駐車場を歩いていると、正司さんが興味ありげにたずねてくる。
「はい、少しだけ……ですけど」
「彼の設計、よかった? また僕にも教えてよ」
にっこりと瞳を細めていたけれど、その奥は笑っていないみたいで背筋が寒くなった。
「そういえば、前に高塔さんが提出してくれたホテルの設計……すごくよかったよ。エントランスなんか特に」
荷物を車へ積み込み、正司さんは運転席へ乗り込むとエンジンをかけた。私も続いて、助手席に座る。