クールな社長の耽溺ジェラシー


「高塔さん? ……と、新野くんか」

振り返ると、閂建設の明かりを背にして正司さんが立っていた。

「あ、お……お疲れさまです」
「どうも。……あまり現場にいらっしゃらないんですね」

頭を下げた隣で新野さんが悪態をつく。

前はいやな態度にしか見えなかったものが、理由がわかったいまは仕方ないと思えた。

「ほかの現場がバタバタしていてね。新野くんがまとめてくれてると聞いてるよ、ありがとう」

柔和な笑みを浮かべたあと、ふと正司さんの視線が私たちを交互にさまよった。

「それにしても、新野くんは余裕だね。仕事後にわざわざ女の子を口説きにくるなんて」
「しょ、正司さん?」

街の明かりで照らされた正司さんは嫌味なほど口角をあげた。

「僕と大違いだ」
「……いえ、確認したいことがあっただけです。すぐに帰りますよ」

半分壊れかけた笑みを浮かべている正司さんとは違い、新野さんは淡々と答えると私から少し距離をとった。

会いたかったから来た、と言ったさっきの熱っぽさは微塵も感じられない。

その行動でやっと、正司さんに誤解されるかもしれない、という考えが浮かんだ。経験値や免疫の問題じゃなくて、まったく気にしていなかった。

それなのに、新野さんのほうが心配してくれていた。たぶん私が正司さんに憧れて、さらに好きだと思っているから。

……なんだろう、少し胸が痛い。


< 78 / 172 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop