Hybrid
彼は私を乗せたまま塒まで歩いていってくれた。
乗り心地は決して良くなかったが、私の身長とほぼ同じ長さの脚で歩かれては歩幅が合わない。
ゆっくり歩いてくれるので、頼もしいイケメンの背中を台にして文字が書ける。うほっ。あ、いやいや。
発見したことなどをひたすら書き殴った。
彼は自らを「ネヴィデイズ」と名乗った。略称は「ネヴィ」。やはり欧米の方から来たようだ。
完璧な発音で紹介してくれたのだが……つ、綴りは分からなかった。ごめんよ。
私はLD(学習障害)により英語の聞き取りが全く出来ない。
これは脳機能の障害によるものなので、申し訳ないが皆様にもご理解頂きたい。
ネヴィは色々教えてくれた。主に騒がしい同居人達についてだ。
まず、いつも寝てばかりの猛禽類がいるらしい。
恐らくタカ類のHybirdだろう。
彼は道端で寝っ転がっていて通りがかった人に襲いかかったという記録が残っている。
そして、何でか知らないけど女の子が大好きなやつがいるらしい。
だ、誰のことだ……
次に、大人しくていじりがいのあるやつがいるらしい。
………………………
最後に、すっげー力持ちの大工がいるらしい。
これは恐らく、ケラ類キツツキ目のHybirdのことだろう。
彼が背負っているハンマーは目立つ為、目撃情報が多い。
なかなか曖昧な表現ばかりだったが、ネヴィの情報も一応全て書き留めておいた。
「ほら、そろそろつくぞ〜」
ネヴィの言葉に顔を上げると、木々の向こうから僅かに光が差し込むのが見えた。
まさか……開けた場所に堂々と巣を構えているのだろうか。
ちょっと危機管理能力を疑うぞ。
向こうから差し込む光が突如消えた。
「……ネーヴ、何と喋ってんの?」
「ナクシムか?ただいま〜」
………一見噛み合ってないようにも見えるが気にしてはいけない。
既に先程の会話でネヴィがそういう奴であるということは証明済みである。
現れた青年は―――巨大なハンマーを軽々と担いでいる。噂のキツツキ目のHybirdだ。
青っぽいくせっ毛がやたらと優雅に波打ち、上品そうな顔立ちに花を添えている。毛先は方々に跳ねているのだが、それすらも優雅に見えてきた。何故だろうか。
瞳は髪と同じく、深い青。何だか心の内を見透かされそうな、吸い込まれそうな目だ。睫毛はそこそこ長めだが、伏せ目がちなので、おめめバッチバチという感じはしない。むしろ……う、麗しい。
肌は少し日焼けして活気のいい色合いになっている。しかし服の襟元付近からは白い肌も覗いている。地の肌は白いのだろう。
額にエメラルド色のバンドをつけている。上品な顔立ちに溶け込み、それでいて儚さを引き立てる。スポーティーでなかなかオシャレだ。
バンドと同色のタンクトップは、恐らくセット物か何かだろう。
しかし、陽の光が届かぬ森の中においては少し寒そうである。さ、流石は大工……なのか?
下は膝丈のピッタリしたしましまパンツスタイルである。相当薄目の生地に見える。やはり少し寒そうだ。
その下から覗く足は、膝の辺りまで人間と変わらない。
が、脹ら脛が途中で鳥の茶色くゴツい脚に変わっている。もう一度折れ曲がり、下は完全に鳥だ。
羽毛もタンクトップと同じくエメラルドグリーンだ。僅かに黄緑色も混じっているようだ。毛並み艶々で健康状態は良さそうに見える。
全体的に見ると、何と言っても佇まいが儚げで麗しい。とても無骨なハンマーを担いでいるようには見えない。
凛とした空気に包まれているような、神々しい雰囲気を放っている。
………服はタンクトップだが。
何故かそれすらも彼の上品な顔立ちを引き立たせる為の道具でしかないように思えてきた。
なかなか目鼻立ちの整った、こちら中性的な美形である。所謂美人タイプだ。
「……あれっ人間の女の子じゃん!遂にネーヴにも恋愛感情が……っ」
「ほんとはたべたかったんだけど、しづーきがつれてこいっていってただろ!だからつれてきたんだぞ!」
「あれ、シューヅキが?んなこと言ってたっけ?」
「しづーきもまったくへんなやつだよなー……つれてきてどうするきなんだろ?」
「まああいつの言うことはいつも正しいんだし、あいつなりに何か考えがあるんだろうよ」
私は心中に湧き上がった疑念を抑えずにいられなかった。
「……読者を代表して質問したいが、シューヅキって誰?シヅーキじゃないの?」
「?シューヅキはシューヅキだよ」「?しづーきはしづーきだぞ」
「はいそうですか分かりました」
全くもって理解不能な会話になってしまったので早々に切り上げる。
だが、そのシヅーキだかシューヅキだかと呼ばれる者は、相当知能の高いHybirdと見えた。彼らを率いる司令塔なのだろう。手帳にカキカキ。
これはご対面が楽しみである。
どんな感じだろうか……
やはり司令塔で絶大な信頼を得ているのだ、相当クールなイケメンなのだろう。
インテリっぽく眼鏡なぞをかけているかもしれない。
恐らく青い髪をサラッと流して「〜〜です」とか言っているに違いない……!!
―――妄想を膨らましていた私は、突然眩い光に目を刺されて現実に立ち返った。
ぐあっ。感覚過敏にこれはキツいのである。