烏と狼の恋愛事情
沖田総悟side
赤いアイマスクを外せばいつも通り
黒髪の長い髪が前に見える。
真面目にノートを取っているらしく、前を向く時
同時に髪も少し揺れた。
まぁ、生徒会副会長様となりゃ こんくらいしとかねェと
なれねーんだろうけど。
窓側の後ろから2番目の席。そこが俺の席だった。
隣は最悪なことに土方。そして前が今井だ。
この席順になった時 とことんついてないと思った。そして今もそう思ってる。
「えー、では 明日の放課後までに提出するように」
今年入ってきた女の教師がそう言ったところでチャイムがなり
ほとんど寝ていて 話もろくに聞いていなかった俺は、ぐーっと伸びをした。
土方の方を向き
「土方さん、何を提出するんで?」
「お前は話をちゃんと聞け」
呆れたように一枚のプリントを見せた。
よくわかんねーことがズラリと書いてあり、これを全て記入して
明日までに提出らしい。めんどくせーことこの上ねェ。
「土方さん、そのプリント…
「貸さねェよ」
なんでィ。俺たちの仲じゃねぇですかィ」
チッと舌打ちをすれば、土方は苛立ったように
ピクリと頰を引きつらせ 俺を指差した。
「何度も貸してやるたびに 俺の無くすか捨てるやつに
貸してェなんざ思う奴いねェだろーが!」
「あ?んなことありやした?」
「あった!てめ、とぼけてんじゃねーぞゴラ!」
こりゃもうダメそうだ。
何が何でも貸さない気らしい土方は、そのまま机の中に
プリントを突っ込んだ。
ほかに貸してくれそうな奴…あたりを見回すが
近藤さんは姉御にしか目がいってねーし、その姉御は…怖いから却下で。
チャイナは論外。メガネも山崎も今教室にいねェみたいだし。
そこで、あ、と目に入ったのは 先ほどまで目の前にいた
黒髪 今井だった。こいつなら合ってるだろうし、
「今井、プリント貸してくれィ」
「嫌よ」
「帰りにドーナツ奢ってやっから」
「!…しょうがない。どのプリント」
ドーナツでつりゃどうとでもならァ。
よだれを垂らしながら 目を輝かす今井に
どこか呆れながらも プリントをもらう。
その時 ズキリ 頭が痛くなった。
なにかのコスプレか、今井と俺が黒と白のどこか似た制服らしきものを着て
2人並んでいた。今井は何か違い どこか違和感があった。
一瞬でそこまで判別できた俺を褒めてやりたいが、
目の前のセーラー服をきた今井は訝しげに俺を覗き込んでいるのに気付いた。
「…なんでィ。んな見てくんじゃねーや、照れるだろィ」
「気持ち悪い」
「殺すぞクソアマ」