気がつけば・・・愛

気持ちが落ち着くとちゃぶ台を挟んで向かい合った

「コーヒーにしましょう」


離れると急速に冷静さを取り戻す頭

住職は独身で・・・
まだ35歳

私は夫も居る身

頭の中に広がるマイナス思考が
徐々に表情を曇らせる

それに気づく住職は

「ごめんなさい・・・焦りすぎました」

寂しそうな目をした


その表情を見ただけで
鼻の奥がツンとする

返事の代わりに
小さく頭を振ると

動きに合わせるように涙が溢れた

伝える必要も無いのに
心の声が唇を割る

「・・・違う・・・の、ごめんなさい。
私・・・ひとつも自信が無くて・・・」

5つも年上の面倒な女じゃくて
素敵な住職にはもっと相応しい相手が居る

一時の感情に流されないで欲しいと
溢れる涙を拭うことも忘れて
少しずつと吐き出すと

穏やかに微笑んだ住職は


「あゆみさんじゃなければ・・・
私はただのお坊さんです」

伸ばされた指が頰の涙を拭い
自分を卑下しないでと宥められた
< 28 / 77 >

この作品をシェア

pagetop