season
「…ビックリしたな、ご両親のこと。ナツも知らなかったんだろ?」




春馬くんを見送ると言って、先ほどの公園まで出てきた私。




少し話せる?と、春馬くんがベンチに腰掛けた。




「知らなかった…。お父さん、全然違う仕事してるもの。教育実習してたなんて初耳だし。」




それに、まさか帰ってきてるとは思わなかった。




まだ落ち着かない心臓に手を当てると、春馬くんが突然立って手招きをした。




「ナツ、こっちおいで。」




促されるまま、しゃがむ春馬くんの目線まで腰を下ろすと…




「つーかまーえたっ。」




「は、春馬くん…?」




木の陰に隠れて、ぎゅっと抱きしめられる。





「…スタミナ切れ。緊張したぁ…。ちょっと充電させて…」



そう言って、もっと強くギュッとしてくる春馬くん。




「…ありがとう、春馬くん。」




「お礼は、お父さんやお母さん……あと、大貴くんと菜々子ちゃんに言って。俺、何もしてねぇよ。ナツの友達は、最高だな。」




本当に、そう思う。




大貴と菜々子、お父さんとお母さん。




教師と生徒の恋なんて、誰もが反対して当たり前のことを…




私の大切な人たちは、私を信じてくれた。




「私、幸せ。」



「ん、俺も。」




この幸せが当たり前じゃないんだってこと。



この幸せは、いくつもの奇跡の上に成り立ってるんだってこと。




…今日、すごく感じた。




「ナツ。頑張ったご褒美ちょーだいっ。」



目を閉じて唇を尖らせる春馬くんに、ふふっと笑いながらキスをした。




この奇跡…




ずっとずっと、大切にしていこう。





そう思った。



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