season
すると、ずっと睨むように春馬くんを見ていた大貴が、チラッと私を見て言った。




「……俺と菜々子も、夏海には笑っててほしいって思ってる。昔から夏海は明るい奴だったのに、あの一件以来塞ぎ込んでたから。だけど…俺にはどう頑張っても、夏海の笑顔を取り戻させるのは無理だったんだ。」



そんな大貴の言葉に、菜々子も続く。



「だけど最近の夏海は、昔以上に笑顔が素敵になってた。だから安心したんだよ。もちろん先生と付き合ってること知った時は驚いたけど…あたしたちが反対したら、夏海…今みたいに悲しい顔したから。今の夏海には、先生が必要なんだなって、わかったよ。」



「大貴、菜々子…」



二人の優しさに、ますます涙は溢れるばかり。




そんな時。




「先生…一つだけ約束してくんない?」




突然、大貴が立ち上がった。




「絶対バレないようにしてください。ふさぎ込む夏海はもう見たくない。学校に行けなくなる夏海は…もう見たくない。」




すると、春馬くんも立ち上がり、大貴を見て言った。




「ああ、約束する。教師としても、男としても、ちゃんとナツを守る。ナツが大切にしている二人に、ちゃんと認めてもらえるように頑張る。」



「春馬くん…」




春馬くんと、大貴と、菜々子。




みんなみんな…私の大切な人。



みんなみんな…私の大好きな人。




友情が壊れなかったこと、春馬くんとのことを認めてくれたこと…




いろんなことを思って、私は最後まで泣いていたけれど。




いつしかその涙は、悲しい涙から嬉しい涙に変わっていた。

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