Sweet moments ~甘いひと時~
ビシッと決まった光沢のあるスーツに、手首から覗く有名ブランドの高級時計。
足元に目をやると、こんな自分でさせ高いだろうなと思えるほど綺麗に磨かれた上質な革靴。
そしてこの空間には不釣り合いな男性が無表情で入店してくれば、誰だって怖いだろう。
少し怯えながらも、必死に笑顔を貼り付け言葉を掛けた。
「い、いらっしゃいませ。お決まりですか?」
男性はしばらく悩んでゆっくりと口を開く。
「苺のショートケーキを。こちらで食べて行く事は可能ですか?」
選んだケーキが、余りにもギャップがあり過ぎて、一瞬固まってしまったのを昨日の事のように覚えている。
しかも自分で食べるんだと。