お見合いだけど、恋することからはじめよう

気を取り直したところで、いよいよシネコンへ向かう。入り口でポップコーンやらジュースやらを買って臨戦態勢に入る。

「ななみんはイケる口?……だったら、ビールにしなよ」

諒くんはそう言ってくれたけれども、あたしは首を左右に振った。

運転しなければならない諒くんが呑めないのに、あたしが呑めるわけがない。
そんなことが父に知れたら、さすがにこっぴどく叱られる。

「きみのお父さんはうちの庁内(会社)でも『酒豪』で有名だけど……あ、そうか、『九州の血』か」

九州人は酒がつよいと、全国的に言われているが、たぶんあたしもその類なのであろう。

「きみの姉さんもすっげぇもんな。
学生時代から『ミスT大』を呑ませてオトそうとして、木っ端微塵に玉砕していったヤツらをゴマンと見てきたさ」

そう言って、諒くんは屈託なく笑った。

……お、おねえちゃーんっ⁉︎

「うちの妹もすっげぇ酒つよいんだ。
特に日本酒。一人で一升瓶空けちまうほどなんだぜ……ま、おれと親父とで、悪い虫に騙くらかされないように鍛え上げたんだけどな」

「ええっ!?……諒くんの妹さんって、うちのおかあさんの教え子って言ってた人でしょ?」

そういえば、お見合いのときに諒くんのお父さんが『名古屋に単身赴任していてそれでなくても顔を見る機会が少ないのに、嫁になんか行かれて、しかも一番結婚してほしくなかった男なんかと……』とかなんとか言ってたような。

なーんか、うちのおとうさんと「同類」の匂いがするなぁ。


……諒くんの妹さん、心中お察し申し上げます。

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