お見合いだけど、恋することからはじめよう

実在する主人公のフレディ・マーキュリーはすでに故人だ。

Queenのボーカルとしてサクセスストーリーを歩むその裏で、愛する妻がいながらも自分は男性しか愛せないのではと、もがき苦しむフレディ。
結局は離婚することになるのだが、インド系というルーツや宗教観の違いによって親からは得られなかった「家族からの愛」を、それでも元妻メアリーに求めることには変わりはなく、離婚後も隣家に住まわせてまでして彼女に執着する。

やがて、彼は自らのセクシャリティを受け入れるようになるのだが、Queenが名声を得ていくその影でプライベートではどんどん自堕落になっていく。確実に迎える死に向かって、突き進んでいるに過ぎないのだ。


そんなフレディの姿を観ているのがつらくなって、スクリーンから目を逸らし、ミニッツメイドのカップをホルダーから取ろうとしたあたしは、ふと隣の席を見た。

すると、諒くんはすやすやと寝息をたてていた。
すっかり照明が落とされた真っ暗な中、スクリーンから差し込まれた光に反射して見えたその顔は……

普段の無機質な「人造人間(サイボーグ)」でも、目尻が下がる「かわいい笑顔」でもなく……


……あどけないほど無防備な、まるで少年のような寝顔だった。

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