お見合いだけど、恋することからはじめよう

「……朝比奈さん、お昼休憩なんですけど」

あたしは副社長室の前で、おずおずと彼女の顔を見上げた。確かにお昼休憩のときは、いつも秘書室で二人でお昼ごはんを食べているのだが。

「大橋さんが外に出ないんですよ」

普段ここまで来ることのないあたしを見て、朝比奈さんが驚いた顔をしている。

「それだけじゃないんです。大橋さん、今朝からちゃんと業務をするようになったんです」

朝比奈さんが、ええぇっ!?と、さらに驚く。

「でも、大橋さんは今までにろくに仕事してこなかったので」

あたしの顔が曇る。

「……まともにできないわけね。
結局は、水野さんがやり直すことになるのね」

朝比奈さんはため息とともにつぶやいた。

「朝比奈さぁーん」

ここは、会社なのに。家じゃないのに。

とうとう、ふにゃっとした泣き顔になってしまった。

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