お見合いだけど、恋することからはじめよう
「そんなことよりも。
わたしが恐れるのは『切れない元カノ』ね。
……愛人一直線だもんね」
大橋さんはそう言って、目を眇めた。
ちなみに、彼女にはまだ政略結婚する相手の影も形もない。
「彩乃、副社長は大丈夫?……あれほどの男よ」
……いやいやいや。
あなた、つい先刻まで彩乃さんから副社長を奪おうとしていた人ですよね?
「あたしのお見合い相手になるかもしれない人も……わかりませんよねぇ。そもそも、上司の娘とお見合いしようだなんて、出世のためとしか思えませんしね」
そう言いながら、自然とため息を吐いていた。
「もし、そういう相手がいるんだったら、最初から政略結婚なんかせずに、そっちとちゃんと結婚すればいいのに」
「ほんとにそうよね。こっちはだれかを不幸にしてまで一緒になりたいわけじゃないもんね」
彩乃さんがあたしに同調してくれる。
「あなたたち、甘いわ」
大橋さんが、ちっちっちっ、と目の前で人差し指を振る。
「出世欲にまみれた男は、仕事も女も両方ほしいのよ」
くどいようだが、彼女にはまだ政略結婚する相手の影も形もない。