お見合いだけど、恋することからはじめよう
もうそろそろ、お昼休憩も終わりだ。
彩乃さんが、
「……あ、そうだ。大橋さ……」
と言いかけて、
「誠子さん」
と言い直した。
「お料理始めるんでしたら、お弁当をつくることから始めるといいですよ」
今日は話に夢中で、あたしたちはいつの間にか食べ終えていた。
「……わたしも、そうでしたから」
彩乃さんはふっくらと微笑んだ。
大橋さん……誠子さんも微笑んで肯いた。
美しかったけれど皮肉めいて見えたあの笑みは、今はもうない。
そういえば、今日は、彼女は長い髪を後ろで一つ結びにしている。ルージュもいつもより薄めだった。
先週までとはあまりの変わりように、初めはびっくりしたけれど。
もしかしたら、この人も、このままではいけないなと、どこかで感じていたのかもしれない。
そして、自分を変える「チャンスの女神」と真正面からがっぷり四つになって、その前髪をがっちりと掴んだ。
女神さまは後ろ髪を刈り上げにした、ファンキーなお方だもんね。