お見合いだけど、恋することからはじめよう

『……でもさぁ、ちょっと、失敗(シク)ったかもしれないんだよねぇ』

友佳のトーンがにわかに暗くなった。

『滅多に東京に来ることのない赤木さんだから、ななみんへ謝ってもらうにはいい機会だと思って、つい教えちゃったんだけどさ』

……あたしたちが赤木さんを見たのは、彼が名古屋に転勤して以来だった。

『もしかして、赤木さん……この春から本社に戻ってくるんじゃないの?』

……すっ、鋭いっ!ともちんっ!!

『ま、人事のことだからね。
ななみんは知ってても言わなくていいわよ』

……さすが法令遵守(コンプライアンス)の「番人」法務部の一員(メンバー)だ。

『とするとさ……ななみんとのわだかまりを「解消」しないと、戻ってきても本社での「居心地」が悪いままじゃん?』

もちろん、業務上は何の差し障りがないとはいえ、終業後に会社の人と呑みにも行けないなんて、寂しすぎるもんね。
特に、赤木さんはお酒好きだし。

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