お見合いだけど、恋することからはじめよう
ロングアイランド・アイスティは、まったく茶葉を使わないにもかかわらず、紅茶の風味を醸し出すカクテルだ。
しかも、ラム酒にウォッカにテキーラにドライ・ジンなど、かなりアルコール度数の高いのが総出演した典型的な「レディ・キラー」である。
おまけに、コリンズグラスのため量もあるのだ。
なので、こんなカクテルをオーダーした日には、自ら「今夜はお持ち帰りしてください」と言ってるようなものであるが。
……これしきのカクテルで、このあたしが酔うわけないっしょ?
そのとき、くすっ、と笑う声がしたので、
あたしが「ザル」だと百も承知の赤木さんだな?と思って顔を上げると……
金髪で左耳にダイヤのピアスを輝かせた二十歳そこそこの若いバーテンダーが、カウンターの奥でにやにや笑っていた。
学生時代の友人の千夏に呼び出されて、初カレの目黒先輩と再会してしまった、六本木のイタリアンバールにいたバーテンダーだった。
……なんで、この店にいるわけ?