お見合いだけど、恋することからはじめよう
「あの月曜日……出社してびっくりしたよ」
桃子さんと『お見合い』した直後の月曜日のことだろう。
「おれがおまえを捨てて桃子と婚約した、っていうウワサが社内中に広まってた」
あたしの心がズタズタになったあの日だ。
「昼休憩のときに、桃子を呼び出して問いただしたら『もう広まったのか』ってうれしそうに笑うから『今すぐ否定してくれ』と怒鳴った。
なのに、『やっぱり諦められないから、否定はしない。たとえ、七海が好きでも構わない』と言われた」
あたしは、お昼休憩のあと、秘書室で桃子さんと対峙したとき、彼のブループールオムが香ってきたことを思い出していた。
……それで、二人で「打ち合わせ」してきたんだ、って思ったんだった。
「……ウワサなんて、知らん顔してバックレていればいいと思ってた。
今まで『オンナを喰い散らかすことに関しては青山と双璧』とか、どんなに根拠のないひどいウワサでも、いつの間にか収束してたからな。
でもさすがにこれはマズいと思って、あわてて同期のヤツらに否定したときには、もう四面楚歌になってて、だれを信用していいのかもわからなくなってた」
赤木さんは苦渋の表情で唸った。
確かに、目立つ彼にはいつもいろんなウワサがつきまとっていた。
「あのとき、おれはまた間違えていたんだ。
まず会うべきだったのは彼女ではなく、おまえだったのに。まずちゃんと話をしなければならなかったのは、同期ではなく、七海……おまえだったのに」
赤木さんは拳を握りしめて、目をぎゅっと閉じた。