お見合いだけど、恋することからはじめよう

「確かに、桃子とは……名古屋に行ってから、
……そういうふうになってしまったけどな」

……ほーら、やっぱり。

「名古屋に行ってからも『四面楚歌』なのは相変わらずだった。
『自動車』のヤツらからすれば、現場を知らない『ホールディングス』がいきなり東京からやってきて、しかも専務のお気に入りときてるんだ。
喜んで受け入れられるわけ、ないだろ?」

赤木さんは大きな手のひらで、前髪をぐしゃっ、とつかんで掻き上げた。

「桃子もやっぱり、周りから浮いて孤立していたな。親父が傍らにいるから、東京にいたときより、表立って我を通すようになったしな」

……あたしはなぜ、あんな人を「会社での姉」とばかりに慕っていたのだろう?
つくづく、自分の見る目のなさが思い知らされる。

「七海からは別れを告げられていたし……桃子からは完全に外堀を埋められたような気がして、もう、このまま、たとえ流されていたとしても『楽』になりたいと思った。
専務にくっついていれば、会社での出世は保証されてるんだから、って自分に言い聞かせて、毎日浴びるくらいに酒を呑んでた。
でも、全然酔えなくてさ……このときばかりは、酒の強い自分を恨んだよ。
あの頃は……かなり荒んで、自暴自棄になってたな」

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