お見合いだけど、恋することからはじめよう
しかし、島村室長がハッと我に返ったようだ。
すぐさま内ポケットからスマホを取り出した。
「おい、おれだ………バカかっ、オレオレ詐欺じゃないっ!おまえはおれの声もわからないのかっ⁉︎」
タメ口も初めてだったが、こんなにぞんざいな口調の島村室長こそ初めて見る。
「うるさいっ、おまえの声は耳につくんだ。
いいか、よく聞け………だから、ギャンギャン騒いでないで、おれの話を聞けって言ってるんだっ!本来ならば恭介に言ってるところを、特別におまえに教えてやってるんだ!」
ものすごいケンカ腰で、しかもかなりの「俺様」っぷりなんだけど、相手はだれだろう?
「きっと、光彩さん……進藤 光彩弁護士ですよ」
翔くんがそっと教えてくれた。
……あっ、友佳が言ってた、法務部が季節外れのブリザードになってるという、あの女弁護士さんね⁉︎ しかも、学生時代の元カノっ!
「翔、おれのななみんに気安く話しかけるな」
諒くんがあたしを引き寄せながら、めんどくさいことを言い出す。
「だから、杉山さんのバーにすぐに来いって!
……今、諒志のおもしろいもんが見られるぞ」
島村室長の興奮した声なんて、激レアなのに。
誓子さんだったら、速攻で飛びつくだろうに。
なのに、自分が関わることだとちっともうれしくない……