お見合いだけど、恋することからはじめよう

諒くんのシトラスの匂いのする腕の中で、ちゅっ、ちゅっ、と啄むように額や頬に、そして、くちびるにキスされて……最っ高にしあわせの気分なんだけど。

島村室長のこの様子だと「他言無用でお願いしますよ」なーんて言いながら、きっと、彩乃さんにも誓子さんにもチクるんだろうなぁ。

……週明けの会社には、恥ずかしすぎて……行きたくないなぁ。


そのとき、カウンターの上に置いてあった諒くんのスマホがヴヴッと鳴った。諒くんが黒い手帳型のケースを開く。

……あっ、あたしがバレンタインでプレゼントしたPORTERのスマホケース、使ってくれてる。

あたしのアメシストのネックレスと同じように、逢えない間はきっと、諒くんの傍にずっといてくれたに違いない。

ディスプレイにはポップアップが浮き出ていたが、ただのネットニュースだった。

諒くんが何気なくタップした。

すると……信じられないものに変わった。


「……ちょっと、諒くん……いったい、なに、それ……?」

< 529 / 530 >

この作品をシェア

pagetop