一円玉の恋
そして、大好きな人を探す。
あっ、居た!でも、ふーん、やっぱりモテるんだなあ。と女性に囲まれている山神さんを感心しながら傍観する。
杏子さんも、私の隣で一緒にそれを眺めている。

「あーー。また囲まれてら。アイツの中身知らない子って平和よね。自分に利益をもたらしてくれる人間には、アイツすこぶる愛想が良いからね。
それ以外だと、失礼極まりない態度、平気で取るしね。
私からしたら、何故アイツがモテるのか意味不明なんだけど。
翠ちゃんやっぱり考え直した方がいいと思うよ。」

と呆れた様子で言ってくる。

「そうなんですよね。私の初対面は最悪だったもんなあ、お釣り要らない発言なんて、今思い出しても腹が立つんですけどね。
どう考えても、私って山神さんにとっては不利益な人間なんですけどねえ。
ほんと、嫌いだったなぁ。視界に入る度に心の中で呪文のように嫌い嫌いって唱えてましたよ。
伝わってたみたいなんですけどね、何を思ったのか、近づいて来るようになって、アパートに現れた時には軽くストーカーですよね。
今もそれは、感じますけどね。」

と私も賛同する。

「しょうがないよね。悪魔に魅入られちゃったんだもんね。」

「そうですねえ。まあ、私もそれなりに好意を抱いてしまったので、しょうがないですね。
もう、外堀はちゃんと埋められてますしね。」

と今度は諦め感を漂わせて、二人でため息をつく。
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