一円玉の恋
そんな私達の周りに男性客が囲みだした。
どちらの出版社の方ですか？モデルさんですか？可愛い方ですね。など口々に質問してくる。
私はお目当ては杏子さんだろうと、傍観者側に回ろうとしていたが、自分も何故かその話しの中心になっていく。
そして、一人の若い男性に腕を取られそうになった。
まだ上手なあしらい方が出来ない私は、杏子さんに助けを求めたが、杏子さんも応戦中だった。
これは自分で解決しないと、と思っていると、
すぐ後ろで、黒いものを漂わせた山神さんが、
「俺の妻に何してんの。」と、私を自分に引き寄せて男性を威嚇した。
男性は驚いて「えっ先生の奥様なんですか？」とかなり素っ頓狂な声で叫んだ。
それには周りがざわめき立って、私は一気に注目の的だ。
ひえー怖っ。特に女性の目が怖い。など考えていると、

壇上で司会の挨拶が始まり出した。
続いて出版社の方の挨拶があり、そして山神さんが呼ばれて、壇上でお客様に挨拶をし始めた。

「本日は私の出版記念パーティーにご参加いただき、ありがとうございます。いつも皆様のご尽力で私の執筆活動ができております。今回この本を出版できたのも一重に皆様のお力のおかげでございます。ありがとうございます。
私は、今回この本「翡翠」を執筆するに当たり、並々ならぬ思いを込めて執筆しておりました。それは、ここにおります、妻、翠に対しての愛です。
翠、こっちに上がって来て。」

と、私を手招きする。

嫌だあー。行きたくない。
愛だって。愛！
どのツラ下げて上がればいいのよ。と思うが、どっちにしても視線が痛い。
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