一円玉の恋
結局ホテルのスウィートに二日も拉致られて、山神さんのもとい、崇さんのマンションによろよろになりながら戻って来た。
だがこの憎っくきエロおやじはピンピンしている。すこぶる調子が良さそうだ。
運動量は明らかに違うのに、なんで?
底知れぬ体力に恐怖を覚える。

引っ越しの荷物はお義母さんや杏子さんのおかげで有り難いことに綺麗に部屋に収まっている。
私は本当にいい方たちに巡り会えた。
その一点だけは、このエロおやじに感謝せねばとは思う。
すぐにお義母さんに電話をして御礼を伝えると、「一応、荷物は全部搬入させたけど、細かいところまでは出来ないから。翠ちゃん、確認してね。あと、家出したくなったらいつでも私に連絡頂戴ね。手伝ってあげるから。」と言ってくれた。お義母様流石です!わかってらっしゃる。
いつか、いや早々にお言葉に甘えます!

とりあえず、荷ほどきをして崇さんと片付けていく、元々私が間借りしていた部屋は、そのまま私の仕事部屋にしていいから、と言ってくれたので、ありがたく仕事の出来る環境に整えていく。
「未熟者なのに、仕事部屋なんて持っていいのかなぁ。」なんて呟いたら、崇さんが、「ちゃんとなるんでしょ?翻訳家さんに!なってもらわないと困るしね。でも君ならなれるよ。絶対にね。頑張れ奥さん。」と言ってくれた。
まだまだペーペーだけど、独立したら崇さんの本は私が英訳するぞー。
なんて意気込んでせっせと片付ける。
少しでも、崇さんの役に立ちたい。
少しでも、仕事の手伝いがしたい。
少しでも頼りにされたい。
必要とされたい。
いつか胸を張って崇さんと肩を並べて歩けたら嬉しいなぁ、と願う。
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