一円玉の恋
そこはきっぱり、

「結構です!これ以上邪魔したら、家出しますよ!早く一人前にしたいのか足引っ張りたいのかどっち?これからは人脈だって広げていかないといけないのに、なるべく崇さんには頼りたくないんです。」と切実に伝える。

「うーん。分かったよ。まあいいや。手には入ったんだし。」と、なんとか私の訴えが通ったらしい。

「本当、アンタ救いようのない馬鹿よねえ。」と杏子さんは冷たい目で見る。

そこに「本当に困った人だな。私の教え子の邪魔をなさらないでいただきたいもんだが。」

と予想だにしない以外な人が奥から現れた。

えーーーー。うそ!

「ええ!教授!何故ここにいるんですか?」

と本当にびっくりだ!

「ご無沙汰してますね。兼子さん。社長の方からはお噂はかねがね、ちゃんとお仕事されているようで、いい方を紹介してくれたと言って頂けて安堵してましたよ。本当に頑張ってらっしゃるようですね。だから、山神さん、あまり邪魔はしないようにして頂きたい。紹介した私の信用も落としかねないのでね。」

と威厳のあるお声で仰っている。
崇さんは面白くなさそうだ。

「ふんっ!お珍しいですね?こんな時間に。何時もなら、かなり遅い時間にいらっしゃるのに。」

と、まるで知り合いのように問いかける。

「ええ、まあ。今日は兼子さんのお祝いに来たので、あと…。」

と教授は杏子さんを見る。

ん?と私も杏子さんを見ると、
「見て見て、これ。」と薬指に指輪をはめて嬉しそうに見せてくれた。

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