一円玉の恋

朝早く起きて、リビングに行くとソファに山神崇の姿がなかったので、ちゃんと自分の部屋に戻ったんだと思って、朝食の準備と洗濯に取り掛かった。

なんとなく顔を合わせづらいし腹も立つので、今日は声をかけないでおこうと、さっさと朝食を食べ、片付けをして洗濯物を干し、セカセカと学校に行く準備をして玄関まで来た。

さあ行こうとドアを開けようとしたら、タイミングよくドアが開いてドアノブにかけた自分の手が勢いよく引っ張られ、気づけば山神崇の腕の中だった。なんと昨夜の二の舞だ。

今度は殴る必要もないので、ぱっと離れて「おはようございまーす。行ってきまーす。」と挨拶をしながら擦り抜けようとしたが、山神崇に首根っこを掴まれて、ぐぇっ、苦しい…。と、
「えっもう行くの？なんか、いつもより早くない？俺のご飯は？」と聞いてくるので、「テ、テーブルに用意してます。」と言ったが、離してもらえず、「待って。まだ時間あるよね？」と言ってくるので、仕方なく戻ってご飯の用意をした。
チッ寝てると思ったのに。

「どこか行ってたんですか？」と聞くと「ちょっと走って来たんだ。」と答えたので、「えっ？走れるんですか？」と思わず聞いてしまった。
山神崇が「どういう意味？」と細い目をして言ってきたので、「いえ、何も。」と穏便に答えておいた。
「用意できましたよ。」さあ食べて下さい。
美味しですよ。と言わんばかりに、ドヤ顔で声をかけると山神崇は「ああ、ありがとう。」と珍しく元気がない。
どうした？と思っていると、「あれ、そういえば煮込みハンバーグは？」と聞いてきた。
はて？あったっけそんなもの。と、とぼけてもしょうがないので、