一円玉の恋
なんかよくわかんない人、と思いながら、目的の部屋のドアに鍵を差し込んで、ガチャリと開けた。

中は極々普通の1LDKだ。だが広さはあるし、キッチンもしっかりしている。
お風呂もトイレも独立していて私的にはかなりイイ物件だ。それに綺麗だ!
テンションがかなり上がる。
イイかも、ここイイかも!
うーんでも、こんだけ良かったら高いかな?と自問自答する。
お値段次第ではすぐ即決だとウキウキ気分だ。

さあ、早く杏子さんの所に戻って交渉しようと思った。
だが、その矢先バンッと照明が一気に消えた。

えっなになに!と突然真っ暗になった事に動揺して身動きが取れないでいる。
目が慣れるのにも少し時間がかかる。
なんで、なんでと考えていると、

「ねえ、ここってさ。前にこうやって女の子が襲われたんだって」

と背後からいきなり耳元で囁かれ、大きな手で口を塞がれた。

「んーーーっ」いやぁーーー。と声にならない声を上げて手を退けようともがくが、全く歯が立たない。
それだけではなく、押し倒されて馬乗りになられ、両手は男の片手で頭の上に一つにまとめられ、床にギリっと押し付けられている。
痛い!痛い!
まだ口も手で塞がれたままで叫ぼうにも声にならない。
いやぁー!いやっ!と心で叫ぶ。
足をバタつかせ、全身で拒否をする。
それでもビクともしない男が私の耳元に顔を埋めて来る。
そして、冷たい声で、
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