一円玉の恋
「アンタってさ、前から思ってたんだけど、ほんと危機意識って低いよね。女の子一人であんなアパート住んでたら、襲って下さいって言ってるもんじゃん?
男が本気出したらどうなるかって、分かってないよね。威勢はいいんだけどね。やっぱ不意打ちには弱いかな。こんないい部屋でも、気を緩めたらこんな事って平気で起こるかもよ?」

と囁き、耳朶を甘噛みし首すじを舌でベロっといやらしく舐め上げてくる。

そんな恐ろしい行動を取る男はもちろん山神崇だ。
一旦、上体を起こした山神崇がこちらを見下ろしてくる。
ネオンの光に照らされた顔は薄く笑みを浮かべ、その瞳は怪しく冷ややかな光りを放って私を見つめている。
怖いっと本気で思った。
体全体が冷たく凍っていく気がした。
塞がれていた口は、解放されているのにもう声を出せないでいる。
その状態に満足したのか、男は再び私の首元から鎖骨に向かって舌を這わせ、片手はトップスの裾から中に進入し、躊躇なく胸の膨らみを下着越しに揉み始める。
いやぁーいやぁー気持ち悪いーと、頭をフルフルと横に振る。涙も出て来る。

首すじを這いずりまわっていた男の顔が今度は私の顔に覆い被さろうとしてくる。
怪しい笑みは湛えたまま顔が近づいてくる。
キスだけはいやぁーと目を瞑って顔を背けると、フッと笑って、
「残念…邪魔者が来た。」といって、全てを解放し上体を起こした。
カツカツカツっと勢いよく歩くヒールの音が近くなる。
ガチャ!バンッ!ドタドタっの音と共にカチっと明かりがついた。
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