一円玉の恋
本当に鬼のように歩かされて、見れる所は見て。
写真など言われるがままに資料集めをした。
そして最後に、

「本当はもっと、ゆっくりじっくり見たかったのに、鈍臭い小娘のせいで、出来なかったね。
まぁ。また今度来ればいいか。ね、翠ちゃん!」

と本当に本当に憎たらしい笑顔で、山神のお父様が嫌味と新たな提案を言ってくる。

「そうですね。お父さん。」とこっちも負けないくらいの笑顔を見せてやった。

「翠ちゃん。」

「はい。なんですか。」

「口塞がれたいのかな?」

「……。すいません。言葉が過ぎました。」

「だよね。」

「はい。」

「次はないからね。」

「はい…。二度と口にはいたしません。」

「じゃあ、翠ちゃん。一緒にお風呂に入ろうか?」

「入りません!」なんでそうなるのよ?

「じゃあ、背中流してもらおうかな。お願いね。」

「ええ!マジですか?」

やばい!心で叫んだつもりが、出たよ。

「マジマジ。大マジだよ。今日さ、給料分働いてないでしょ?だからね。頑張って働こうね。じゃあ、部屋で用意しようか?」

とお手手を繋いだまま旅館の中に入って行った。
ああ、私帰りたいです。
お父様、私貴方の裸は畏れ多くて見れません。
魂魄飛び散ります。

女将さん、ただ今帰りました。
どうかこの作家先生様を通報して下さい。
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