一円玉の恋
目覚めた時、何故かすごく切なかった。
どこにも行かないでってしがみ付こうとしたのに、私の頭をクシャっと撫でて何処かに行ってしまった。
夢に出て来る人は、どこにいるのだろうか?
会う事が出来るんだろうか?
なんて、考えながら朝食の用意をする。

今日は会社説明会があるから、早めに支度しないと。

「おはよう。翠ちゃん。休みなのに早いね。」
と山神さんが、部屋から出て来た。

「あっ、おはようございます。今日は会社説明会があって、早めに支度しようと思って。あっ、昨日、すいませんでした。カウンターで寝ちゃって。これで2回目ですもんねぇ。今度は気を付けます。」

「ああ、本当ね。重いよね。タクシーだからいいけど。米俵ってこんな感じなのかなぁって担いで思ったよ。あっ、だからか、腰が痛いのは。ベッドに放り投げてやったけど、痛くなかった?まっ大丈夫か。翠ちゃん、絶対起きないもんね。はっは。」

なっ!なんて、酷い事を!年頃の娘に向かって!気にしてる事をズケズケと!
夢の中の男の人はそんな事言わないもん!王子様は絶対言わない!
少しは見習え、このセクハラおやじ!

「それは、ただの老化現象じゃないですか?カルシウム取った方がいいですよ。まだ、モテたいんですよね?鍛えないと、若い子にはモテませんよ。お、じ、さ、ま!」
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