一円玉の恋
言ってやった!言ってやった!全然怖くないもん!ほらっ、びっくりしてる。
だって本当の事だもん!貴方の所為で私がおかしくなるのは。
だから嫌い!意地悪する人は嫌い!
だからもう、ここには居たくないです!

言いたい事だけ言って、ボー然としている山神さんを放置して自室に戻った。
もう知らない、雨に濡れていたけど、そこら辺で寝ればいいんだ!風邪でも引けば良いんだ!
もうお給料もいらない、今までもらったお金も返すもん。
だからもう、私に構わないで下さい。

いつもなら、朝食を作る時間だが、部屋から一歩も出なかった。
その後、二時間ほどして、コンッコンッと部屋をノックする音がする。
そんなのは決まってる。山神崇だ。
私は無視を決め込む。

「翠ちゃん、その…。夜中はごめん。あ、誤ってすむことじゃないけど…。ごめん。これから、ちょっと出掛けるけど、戻ったら話がしたいんだ。じ、じゃあ、行ってきます…。」

無視!そんなものは無視だ!
沈んだ声をしたって、可哀想なんて思わない。
タネを蒔いたのは山神崇、アンタだ!
私の中でのアンタの株は地に堕ちました。

山神崇が出掛けてから、私は急いで身支度を済ませ、必要なものは全てキャリーケースに詰め込んで、鞄にも詰め込んで、山神崇から受け取った給料が入っている通帳をテーブルの上に置き、とりあえず、荷物は改めて取りに来るという事と、お世話になりました。という事だけ書いて、マンションを後にした。
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