一円玉の恋

「京都のは…その…見られてるとは思わなかった。あの女性は昔し付き合ってた人で、俺の素行の悪さで酷く傷つけてしまったんだ。
だから、ずっと彼女が忘れられなかったのは確かで。
けど、結婚するって聞いて、過去を誤りたいのと祝福がしたかったのと、翠ちゃんの事を伝えたくて、会ったんだ。
その…キスは…彼女から不意打ちでされて…さよならのキスだって言ってたけど、なんか、ごめん。
でも、ちゃんと彼女とはお互いきっちりケジメをつけれたんだ。
本当は翠ちゃんが起きてたら、一緒に連れて行こうと思って、いや、起こしてでも連れて行くべきだったね。この子が俺の片思いしてる子だって紹介しようと思ってたんだけどね。」

私は俯いたままただ黙って、山神さんの話しを聞いた。
それしかできなかった。

山神さんが、私を好き？私を…好き。
杏子さんでも、あの京都の人でもなくて…私。私を…。山神さんの話しを反芻する。
好きという言葉が繰り返し繰り返し浮んでくる。
しばらく黙っている私に、山神さんが痺れを切らしたのか、

「翠ちゃん…俺の家に一緒に帰ろう。ね。俺、翠ちゃんと一緒にいたい。強引に住まわせたけど、離れられるのは嫌なんだ。」

私は、ふるふるっと首を横に振った。