一円玉の恋
もう言ってくれたら良かったのに。
でもあれか、有名人だから大っぴらには言えないわよね。
で、自分の所で翠ちゃんを引き取るんで、明日には引っ越しさせるから大丈夫って、仰ってくれたのよ。良かったわぁ。
とりあえず、ここっておじいちゃんの代から建て変えてないから、老朽化も激しくて、これを機に綺麗にしちゃおうと思って。
皆んなには一回出てもらう話しで今回ってるのよ。だから本当良かったわ。
とりあえず、他の部屋にも言ってくるわね。
手続きは後日でいいかしら?山神さんに聞いといてもらえる?」

大家さんの矢継ぎ早な話しを、ただあんぐりと口を開けて聞いていた。
山神って誰?私知らない。誰だーーーーーあ。
げんなりしながら部屋に戻ると、まだアイツが居た。
お前の顔は見たくない。

「あっ。おかえり。どうだった?大家さんと話しした?とりあえずさ。今日いる物だけまとめて、明日っていうかもう日付変わってるから、今日だけど。引っ越しはこっちで手配するからさ、今から俺ん家行こう。ね、翠ちゃん。」

…お前かぁーーー。山神って。

「はぁ?なんで、知らない人にお世話にならないといけないんでしょうか?」

「あっそっか。じゃあ、山神崇って言います。翠ちゃんと同じ名前なんだよ。字は違うけどね。歳は三十です。独身です。本書いてます。自分で言うのも何だけど、ちょとは売れてます。なので、身元はしっかりしてます。家は目の前です。だからね、困った時はお互い様って言うじゃん。これも何かの縁だと思って、俺ん家においでよ。大丈夫、ガキンチョには手を出さないからさ。」
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