カラダから、はじまる。
「あっ、そうだ……うちの弟がこの前さぁ、家に彼女を連れてきて、うちの両親に『そろそろ結婚したい』って言ったんですって」
「ええっ、まだ大学を卒業したばっかりじゃないの?」
従弟とわたしとは、八歳ほどの歳の差だ。
「大学の新歓コンパで知り合って、ずっとつき合ってるそうよ」
「だからって……早過ぎない?」
「わたしも、もうちょっと『社会』を見てからでもいいと思うんだけどねぇ」
そう言って、麻琴は鮮やかなルージュを引いたあと、唇を数回閉じ開きをしてなじませた。
「……ねぇ、七瀬ちゃんは、七海ちゃんが先に結婚して、叔父さんや叔母さんからせっつかれたりしない?」
麻琴が鏡越しに上目遣いで訊く。
その表情には、彼女の子どもの頃の面影が色濃く残っていて、わたしは思わず微笑んだ。
「あぁ、そういう面では、うちはわたしには『放任主義』だから」
「……いいなぁ、わたしなんか、早速うちのおとうさんから『おまえはいい人がいないのか?いないんだったら、見合いでもするか?』って言われたわよ。今日の七海ちゃんの結婚式を見て、また言われるわ」
麻琴はその麗しい顔を歪めてごちた。
「あら、麻琴ちゃんには彼氏はいないの?」
すると、歪みがさらにひどくなった。
「……同じ会社に好きな人がいるんだけどね。
もう、なりふり構わずアタックしてるんだけどね。頼み込んだらデートはしてくれるんだけど、なかなか振り向いてくれないのよ」
……へぇ、こんな美人がそこまでしてるのに、袖にする男ってすごいわね。