カラダから、はじまる。
「七瀬さん、それでもね……どういうわけか、僕はそんな面倒くさいあなたも好きなんだ。
やっぱり、あなたには僕がいなくちゃダメだな、って思わせてくれるからかな?」
……えっ? こんなわたしなんかで、いいの?
彼のおかげでわたしは「地底生活」から急浮上した。
「でも、あなたの方はこれからだ。
僕のことはほとんどなにも知らないだろうしね。
……あ、でも、勉強が得意で仕事はできても『芸術』が理解できない諒志さんと違って、僕はあなたの好きな観客を結末で置いてけぼりにするフランス映画とかでも、全然大丈夫だからね。初めてのデートはミニシアターにしようか?」
わたしは縋るような目で彼を見て、うんうんと大きく肯いた。
……真澄くんのことを知りたい。
いいところも、悪いところも、これから全部。
そして、わたしにしてくれているみたいに、彼のすべてを受け入れたい、と思った。
「でも、無理しなくていいんだ。
あなたはね……なんでもその賢い頭で、いつもあれこれ考え過ぎなんだよ」
彼は穏やかなやさしい笑みを浮かべて、わたしのくちびるに、ちゅ、と軽くキスをした。
「だから、とりあえずは、なにも考えずに……」
わたしの膣内の「彼」が増していく。
二十代男子を侮ってはならない。
「……カラダから、はじめればいい」
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「カラダから、はじまる。」〈 完 〉


