カラダから、はじまる。
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今日の夕飯は水炊きだった。

うちの水炊きのお出汁(だし)はいつも、華味鳥の水炊きスープである。父親が福岡出身だからだ。

と言っても、わたしは父の地元への転勤の際に一人だけ東京に残った身であるため、すっかり博多弁をマスターして帰ってきた妹と違って、正直言って馴染みはない。

だが、この白濁した鷄スープは、わたしの体内を半分流れる「福岡人の血」なんか抜きにしても、すごく美味(おい)しい。


「……七瀬、顔色が悪いみたいだけど、大丈夫?最近、特に仕事がキツいみたいね?」

母が呑水(とんすい)と箸を父とわたしに渡しながら訊く。
今日は父も休みが取れたらしく、食卓に着いていた。

「もう三十歳過ぎたんだから、二十代のときみたいに、お肌も言うことを聞いてくれないのよ?」

……おかあさん、一言、多いのよっ。

「わかってるわよっ」

わたしは幼い頃のクセで口を尖らせた。

そうなのだ。しっかり寝たつもりでも、コンシーラーを厚塗りしても、うっすらと浮き出てくる目の下の隈が隠せなくなってきているのだ。

わたしは、腹立ち紛れにスーパードライのプルトップをプシュッと開けて、缶ごとくーーーっと飲む。

(ちまた)では九州人は酒が強いと思われているが、わたしもご多分に漏れずそうであるのは、やはり「福岡人の血」が為せる(わざ)なんだろうか?

「もうっ、はしたないわよ、七瀬。
ちゃんとグラスに移しなさい。それから、そんな一気に呑まないの」

母から「ほら」と、ビアグラスが差し出された。
「サンキュ」とわたしは受け取る。

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