カラダから、はじまる。
「……今頃、七海は諒志さんと楽しめているかしらね?」
菜箸でお鍋の具材の煮え加減を確かめながら、母が言う。
……今日は何時に帰ってくるんだろ?
いくらヤツでも、お見合いの相手に対しては、いきなり「定番コース」へ持ち込むことはないとは思うけどさ。
「七海は、今まで男と二人で遊びになんて行ったことないだろうから、どうだろうな。
……ガチガチに緊張してるんじゃないか?」
ビアグラスのスーパードライをくーっと一気に呑み干した父が、手酌で缶から注ぎながら応えた。
……はぁ?
わたしは母と顔を見合わせた。
母もわたしと同じく「アンタ、なに寝ボケたこと言ってんの?」という顔をしていた。
仕事ではあんなに人の心が読める父なのに、どういうわけか、もう二十六にもなるっていう七海には彼氏がいた試しがなく、当然のことながらまだ処女だと思っている節がある。
わたしの「見解」では、彼氏らしき男は少なくとも学生時代に一人、就職してから一人はいたはずだ。