触って、抱いて、もっと愛して。臆病な令嬢は貴公子の一途な熱情に蕩かされました(原題「その身体に触れたら、負け」)
「殿下と……御結婚が近いのではないのですか?」
「そうしたいと言われたことは、あるよ」

 やはり火のないところに煙は立たないのだ。オリヴィアはきゅっと手を握りしめた。

「だけどもう何度も断っている。そろそろ罰せられるだろうな。……いや、今は殿下のことはいいんだ。殿下と結婚する気はないよ」
「フレッド様」

 オリヴィアはそっと彼の背に身体を寄せた。彼がぴくりと身を震わせる。

「婚約が破談になって、ずっと……辛かったです。お父様が捕まって……あのお父様が罪を犯すだなんて信じられなくて。あなたと話がしたくて、でも罪人の娘が宰相補佐官ともあろう方に連絡したら、足を引っ張ることになりそうで、できませんでした」
「そばにいられなくて、ごめん。心細い思いをさせた」
「会いたかったの……」
「うん」

「……一人にしないで」

 思いきってそう告げると、眦に溜まった涙がひりついた目もとを零れ落ちる。フレッドが息をのんだ気配がした。
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