触って、抱いて、もっと愛して。臆病な令嬢は貴公子の一途な熱情に蕩かされました(原題「その身体に触れたら、負け」)
「しかしいいのか? 麻薬のことはともかく、彼女は父親がなぜ罪を犯したか気になっているんじゃないか?」
「だからだよ、サイラス。父親が手を汚した理由が自分を守るためだと知ったところで、彼女が喜ぶとは思えない。
逆に、彼女なら自分のせいだと気に病むだろう」

 サイラスとともに主宮殿に向けて歩く。王宮の裏側の庭園は季節ごとにその趣が変わるが、今は野趣にあふれる風景だ。可憐な花が風に揺れるさまは癒やされる心地がする。

「それもそうだな。要らん悩みだ」
「ああ。さっきもラッセル殿が白状したわけじゃない。僕の推測を否定しなかっただけだ。彼が隠すのなら、僕もそれに従うよ」
「わかった。やっと取り返した婚約者だものな」
「……彼女には笑っていて欲しいんだ」

 サイラスが「そうだな」とフレッドの肩をぽんぽん叩いた。
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