触って、抱いて、もっと愛して。臆病な令嬢は貴公子の一途な熱情に蕩かされました(原題「その身体に触れたら、負け」)
 それに、そんな意地悪な言い方でも本当は彼女を気遣ってくれているのだ。

「……好き」

 意識する前に零れ落ちた言葉に、フレッドが不意をつかれて固まった。珍しい表情に、オリヴィアはますます笑みを深める。

「会えて、嬉しいです」
「……まったく。参ったな」

 フレッドが再び彼女に口づけた。その笑みは参ったと言いながらも嬉しそうで、オリヴィアは胸がいっぱいになる。こんな風に目もとを甘くやわらげた彼を見ることができるのなら、何でもできる気がする。

「今日は挨拶をしたらまた王宮に戻らなくてはならないのに、このままきみを離したくなくなるよ。王宮まで来ないかい?」

 フレッドが抱きしめた彼女の首筋に顔を埋め、何度も唇を落とす。

「お仕事でしょう? いけませんよ」
「きみがいれば仕事もはかどりそうだけどな」
「……でも」

 オリヴィアは先日の仮眠室でのことを思い出す。頬が熱くなった。

「なにを考えているの? 僕と同じかな」

 フレッドが彼女のドレスの胸元をくいと指に引っかけると、その内側の肌をちうと吸い上げる。ちょうど外からは見えるか見えないかきわどい場所だ。弾みでフレッドからの手紙が手の中から滑り落ちた。
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