触って、抱いて、もっと愛して。臆病な令嬢は貴公子の一途な熱情に蕩かされました(原題「その身体に触れたら、負け」)
「フレッド様! だめ」
「わかってる。僕もグレアム公の前では節度のある行動を心がけるよ。だからこれだけ」

 フレッドは再び彼女を抱きすくめると、深く口づけた。

 たっぷり時間をかけて彼女の口内を食べ尽くすと、フレッドは満足そうにオリヴィアの背をうながした。さり気なく手紙を拾い上げると、「僕がここにいる以上、もうこれは不要だな」とトラウザーズのポケットにしまう。

「まだ読んでいなかったのに」

 オリヴィアが潤んだ目で抗議すると、歩き始めたフレッドが眦をゆるめた。

「きみがうっかり落とすからだよ。きみはしっかりしているようでときどき……」
「それはフレッド様があんなことをなさるからですもの!」

 わなわなと唇を震わせ、彼女はずんずんと居間に隣接する温室へ足を速める。

「人が悪いですわ」
「きみを怒らせる趣味はなかったはずだが……おかしいな。怒ったきみも可愛くて始末に負えない」

 苦笑しながらも、フレッドは涼しげな顔で隣を歩く。反対にオリヴィアはその場で硬直した。

「……あ、の、フレッド、様」
「なんだい? もしかして照れてる? 顔が赤い」
「……慣れないんですもの」
「これからは浴びるように言われることになるから、慣れてくれ。でないと本当にきみを離せなくなる」

 フレッドの攻撃に、オリヴィアは口をぱくぱくさせることしかできない。
 耳まで熱くなる。その耳をフレッドがぺろりと舐めると、爽やかな笑顔で彼女の背を軽く押した。

「ほら、行こうか。姫を奪いにきた、しがない騎士の闘いを見ていて」
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