触って、抱いて、もっと愛して。臆病な令嬢は貴公子の一途な熱情に蕩かされました(原題「その身体に触れたら、負け」)
公爵家の温室は庭に面したガラス貼りのもので、開放感にあふれている。屋根の一部を覆うほどの大きな葉を広げた南国の木が心地よく影をつくり、オレンジのタイルが敷き詰められた床には様々なハーブの鉢が並べられていた。タイムやセージ、ミント、マジョラムといったさまざまな香りがあふれている。
それらはてんでばらばらのようでいて、実は細かく計算されているのだろう、香りも色彩も互いが互いに主張しつつも見事に調和していた。オリヴィアも気に入りの場所である。
グレアム公はフレッドの突然の訪問にも落ち着いた様子だった。対照的に落ち着きがなかったのはエマだ。なぜかメイドの代わりに温室へワゴンを押して入ってきた彼女は、フレッドをまるで親の仇を見るようににらんだ。カウチに腰掛けた皆の前に紅茶を並べるあいだも、フレッドの分だけは心なしか乱暴な手つきだった。
「君はヴィオラ殿下と婚約も間近だというもっぱらの噂だが、その渦中に娘に求婚するとはどういう了見だね?」
グレアム公は優しげな雰囲気をかもし出しているが、その言葉はさすがに公爵家の貫禄のあるものだった。
「その話は事実無根です。僕が妻に望むのは、オリヴィア一人です」
胸がきゅうっと締めつけられるオリヴィアと反対に、公爵はその言葉でほだされはしなかった。
それらはてんでばらばらのようでいて、実は細かく計算されているのだろう、香りも色彩も互いが互いに主張しつつも見事に調和していた。オリヴィアも気に入りの場所である。
グレアム公はフレッドの突然の訪問にも落ち着いた様子だった。対照的に落ち着きがなかったのはエマだ。なぜかメイドの代わりに温室へワゴンを押して入ってきた彼女は、フレッドをまるで親の仇を見るようににらんだ。カウチに腰掛けた皆の前に紅茶を並べるあいだも、フレッドの分だけは心なしか乱暴な手つきだった。
「君はヴィオラ殿下と婚約も間近だというもっぱらの噂だが、その渦中に娘に求婚するとはどういう了見だね?」
グレアム公は優しげな雰囲気をかもし出しているが、その言葉はさすがに公爵家の貫禄のあるものだった。
「その話は事実無根です。僕が妻に望むのは、オリヴィア一人です」
胸がきゅうっと締めつけられるオリヴィアと反対に、公爵はその言葉でほだされはしなかった。