触って、抱いて、もっと愛して。臆病な令嬢は貴公子の一途な熱情に蕩かされました(原題「その身体に触れたら、負け」)
 ちなみにこのレースはリリアナの勧めで取り寄せた、クライドル産の最高級のものである。彼女はこの日はじめて、ドレスに飾りを取り入れたのだった。
 複雑に結い上げられた髪から見える耳には、大粒のエメラルドが輝いている。その輝きを写し取ったかのように、ドレスの腰から裾にかけて微小なエメラルドが星屑のように散りばめられていた。

 目もとを柔らかくゆるめた宰相補佐官が、彼女に心を定めていることも一目瞭然だった。

 人々のどよめきは様々な憶測を含んで、自然と王女へ好奇の目を寄せる。その王女は兄である皇太子や第二王子とともに、国王夫妻の隣で諸侯の拝謁を受けていた。

 オリヴィアたちも列に並ぶ。

 目の前にはグレアム夫妻が並び、隣にはフレッドがいる。それでも緊張で震えそうになる。オリヴィアが彼の腕に添えた手にきゅっと力を込めると、彼の手が重ねられた。少しだけ強張りがゆるむ。

 いよいよグレアム夫妻の番になり、オリヴィアはごくりと息をのんだ。

「御挨拶が遅くなりまして申し訳ございません。この春に娘を迎えました。オリヴィアといいます。なにとぞよろしくお願いいたします」

 彼女も隣に歩み出て、最敬礼をとる。

「オリヴィア・フリークス・グレアムです。よろしくお願いいたします」
「そうか。オリヴィア、良くいらした。公の家も華やかになったな」
「娘ができたおかげで、私も若返った気分でおります」

 上段の端、ヴィオラ王女からの視線がオリヴィアに突き刺さる。
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