触って、抱いて、もっと愛して。臆病な令嬢は貴公子の一途な熱情に蕩かされました(原題「その身体に触れたら、負け」)
 なかなか涙の止まらない彼女を、フレッドが王宮の庭園に連れ出す。広間ではさきほどの興奮も冷めやらぬまま賑やかにダンスが始まったが、その音もすぐに遠のいた。

 秋の終わりの気配がする庭園は、昨年から趣向を変えたのか野草が見目良く配置され領地の景色にも似ている。繊細なレースのような白い花が揺れていた。

「きみは泣き虫になったね」

 フレッドが彼女の泣き顔をいたずらっぽく覗きこむ。

「……フレッド様のせいです」

 みっともないところをまたさらしてしまった、とつい泣き声のまま口を尖らせる。

「そうだね、ごめん」
「いえ! そうではなくて、ただ」
「うん?」

 庭園の奥の四阿のほど近くで立ち止まる。

「やっと、あなたの隣に立てると思うと嬉しくて」

 フレッドが目を見開き、破顔する。オリヴィアの腰を抱き寄せた。

「それは僕の台詞だ。やっと失せ物を取り戻せた」
「失せ物、ですか。私が?」
「そうだよ。『大事な物を取り戻すために駆けずり回っている』と言ったのに、きみは全然気づかないんだから呆れる」
「あ……」

 彼女は再会の日を思い出して、身を縮めた。あれは自分のことだったのか。

「まったく、鈍い」

 そう笑うフレッドに少し悔しくなったけれど、オリヴィアは彼の胸の中で「はい」と泣き笑いで返した。

「そういえば、お約束を果たしてくださいましたね」
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