触って、抱いて、もっと愛して。臆病な令嬢は貴公子の一途な熱情に蕩かされました(原題「その身体に触れたら、負け」)
「約束?」
「王宮の庭園を案内してくださる、って」

 フレッドが庭園を懐かしそうに「そうだったね」と見渡す。
もう見ることなどないだろうとまで思った光景が、いま彼女のすぐ隣にある。

「だから私、胸がいっぱいで」
「まったくきみは強情かと思えば、ときどきこっちがどきりとするくらい素直になるんだから。残念ながらこれ以上は案内できそうにない」
「え?」

 フレッドが素早く彼女の唇を奪った。

「きみが欲しい」
「えっ」
「今すぐ」

 彼が腰を抱く腕に力をこめる。甘く蕩けそうな眼差しはひどく色っぽくて、何を指しているのかオリヴィアでもさすがに気づいた。

「……っ、な、何を……。舞踏会の最中ですよ」
「じゃあもう帰ろう。いいだろう? 挨拶もしたし目的は達したんだ」

 立て続けの攻撃に彼女はたじろいだ。彼がなにかとオリヴィアに触れたがるのも、口づけが好きみたいだということも最近になって身に染みてわかったことだけれど、それにしてもスイッチが入るのが急すぎてついていけない。

 口をついて出る言葉はどれも意味をなさない。そのうちにかあっと頬や耳もとまで熱くなってくる。

「きみのせいだ。きみがそんなことを言って僕を煽るから」
「そんな……んっ」

 フレッドが反論しようとした彼女の口を塞ぐ。強引な仕草にオリヴィアは翻弄されそうになる。
 彼女はどうにか理性をかき集めて、フレッドの胸を押し返した。
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