触って、抱いて、もっと愛して。臆病な令嬢は貴公子の一途な熱情に蕩かされました(原題「その身体に触れたら、負け」)
「ああ、驚いたよ。綺麗だ。……僕もちょうど今日、きみがこの色を身につけてくれたらいいと思っていたんだ」
「では、きっと以心伝心ですね。フレッドと同じことを考えるなんて。ふふ、可笑しいですね。でも嬉しい」

 初々しい恋人のごとく頬を染めたオリヴィアは、いつのまにか何もかもを丸く包みこむやわらかさを併せ持つようになったと思う。
 これからも自分たちはなんてことのない日常で、ときに同じことを思い、いつしか心の形を互いに寄せていくのだろうか。それはなんとも幸福な予感だ。

「オリヴィア、おいで」

 目を細めて呼べば、妻は口もとをほころばせてすんなりと腕の中に収まる。抱きしめた身体の甘やかな香りを吸いこみながら、フレッドはふと眉を曇らせた。
 このドレスだと、脱がせるのは少々、……いや、かなり難しいのではないか。
 差し出された心を無下(むげ)にするようで、どうも気が引ける。

 苦笑いとともにオリヴィアの耳朶に手を伸ばす。もうすぐここにも空色を飾ることになる。そうすれば、このドレスを脱がせるときもためらわずに済むだろうか。

 やわらかな肌を指先で軽くくすぐる。

 彼女が鈴を転がすような声で笑い、身をよじった。
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