触って、抱いて、もっと愛して。臆病な令嬢は貴公子の一途な熱情に蕩かされました(原題「その身体に触れたら、負け」)
「オリヴィア嬢は健気ですね。お可哀想に。目の前で婚約者が別の女性と仲睦まじくしているのに庇うのですか。それもその相手は夫がありながら若い男に手を出す女だ。二人とも程度が知れますね」
「可哀想? 勝手な想像を押しつけないで。私のことはともかく、フレッド様やアイリーン様のなにを知っているというのです」
話が噛み合わない。オリヴィアはさらに足を速めたけれど、カイルとの距離は確実に縮まっていた。
「貴方の求婚はお断りしました。それが全てです」
「それなら先に事実を作ってしまえばいい。あなたを慰めて差し上げましょう」
カイルが彼女の手をぐいとつかむ。ひっと声にならない悲鳴が漏れた。
「なに、すぐにあなたも俺に感謝することになりますよ」
「放してください! 貴方に慰められるようなことなどありません。こんなところを誰かに見られたら、カイル様も言い逃れできませんよ」
彼女は必死に抗うけれど、カイルは捕えた獲物をいたぶるように彼女の手をぐいぐいと引き寄せる。
「むしろ見られた方が好都合ですよ」
その目に映る劣情に誰とも知らない男が重なり、オリヴィアの皮膚が総毛立った。
あのときはまだ少女と言える歳だった。だけど、痕が残るほどの力でつかまれた手の感触も、押し倒された背中が地面に当たった痛みも、ドレスを引き裂かれた音も、未だに鮮明に残っている。
「いや! やめてっ、放して!」
「大丈夫ですよ、気持ち良くして差し上げるだけですから」
カイルが薄気味悪い笑顔で、ひときわ強く彼女の手を引いた。
心の中で悲鳴を上げる。けれどそれは過ぎた恐怖に言葉にならないまま、むせ返るような香りのするものを口に押し当てられ、オリヴィアの意識は急速に暗闇に飲み込まれた。
「可哀想? 勝手な想像を押しつけないで。私のことはともかく、フレッド様やアイリーン様のなにを知っているというのです」
話が噛み合わない。オリヴィアはさらに足を速めたけれど、カイルとの距離は確実に縮まっていた。
「貴方の求婚はお断りしました。それが全てです」
「それなら先に事実を作ってしまえばいい。あなたを慰めて差し上げましょう」
カイルが彼女の手をぐいとつかむ。ひっと声にならない悲鳴が漏れた。
「なに、すぐにあなたも俺に感謝することになりますよ」
「放してください! 貴方に慰められるようなことなどありません。こんなところを誰かに見られたら、カイル様も言い逃れできませんよ」
彼女は必死に抗うけれど、カイルは捕えた獲物をいたぶるように彼女の手をぐいぐいと引き寄せる。
「むしろ見られた方が好都合ですよ」
その目に映る劣情に誰とも知らない男が重なり、オリヴィアの皮膚が総毛立った。
あのときはまだ少女と言える歳だった。だけど、痕が残るほどの力でつかまれた手の感触も、押し倒された背中が地面に当たった痛みも、ドレスを引き裂かれた音も、未だに鮮明に残っている。
「いや! やめてっ、放して!」
「大丈夫ですよ、気持ち良くして差し上げるだけですから」
カイルが薄気味悪い笑顔で、ひときわ強く彼女の手を引いた。
心の中で悲鳴を上げる。けれどそれは過ぎた恐怖に言葉にならないまま、むせ返るような香りのするものを口に押し当てられ、オリヴィアの意識は急速に暗闇に飲み込まれた。