触って、抱いて、もっと愛して。臆病な令嬢は貴公子の一途な熱情に蕩かされました(原題「その身体に触れたら、負け」)
遅れて倒れたオリヴィアを男が受け止めようとしていることに気づく。カッと頭が沸騰した。ぞっとするような低い声が口をついた。

「彼女に何をしている」

 フレッドは男につめ寄ると、その頬を思いきり殴った。男がよろめいたすきに彼女を奪い返す。横抱きに抱えあげると彼女は力なくその手足をだらりと投げだした。

 カイルが切れた口の端を拭って挑戦的な笑みを浮かべる。

「婚約者のご登場ですか。早かったですね。なに、ちょっと彼女と話をしていただけですよ。昔のよしみで」

 下卑た声に、もう一度殴りたい衝動をなんとかこらえる。
 今はこの男とやり合うよりもオリヴィアの様子が気にかかった。着衣は乱れておらず外傷もないようだが、深く澄んだ碧の目は開かれる様子がない。意識を失っているようだ。

 甘ったるい匂いがかすかに彼女に絡みついている。踊ったときには、こんな香りは身につけていなかったはずだ。

「彼女に何をした?」
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