触って、抱いて、もっと愛して。臆病な令嬢は貴公子の一途な熱情に蕩かされました(原題「その身体に触れたら、負け」)
「なに、婚約者の浮気を嘆く彼女を、少し楽にして差し上げただけですよ。彼女も満更ではなかったですよ」
「ふざけるな」

 彼女を抱いていなければ、確実にもう一発殴っていただろう。カイルの視線はまだオリヴィアにあり、まるで視姦するかのようなものだった。こんな奴にこれ以上彼女を見せるわけにはいかない。

「貴殿が何を言おうと、この結婚はすでに決まっている。貴殿の出る幕はない。今後いっさい、彼女に関わるな」

フレッドはそれまでより一層鋭い目つきで相手を見すえた。視線だけで相手を射殺せそうだった。カイルがわずかに怯んだ。

「もしも彼女に近づいたら、次は貴殿を全力で叩き潰す。容赦はしない」

 次どころか今、再起不能にしてやりたいところだが、なにより彼女が心配だった。フレッドは、その一言を投げつけるとオリヴィアを抱え直して足早に引き返した。
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